“関東ふれあいの道”という、環境省が制定した「おすすめコース」がある。
その優しそうな名前に反して、実態は10km越えの縦走ロングコースがざらという。山歩きを始めた頃、棒ノ折山~御嶽駅をひーこら言いながら進んでいるときに出くわしたこの看板に、「なるほど、関東ふれあいの道っていうのは自分の限界とふれあう道か」と苦笑したことがあった。
そして今回、「関東ふれあいの道」、東京都のNo.1である「湖のみち」を歩いた。全長16.2km。
特にこのコースを歩こうと思って決めたわけではなく、高尾山の地図を眺めていたら「南高尾山陵」が目にとまったから。津久井湖へ行くも良し、そのまま高尾山口へ戻るも良しというフレキシブルさに惹かれて、ここをのんびり歩いてみようと決めた。
「南高尾山陵」をターゲットに定めても、そこから歩き出そうとすると相模湖駅からバスに乗って大垂水峠で降りる……というなんだか面倒くさいアクセスだったので、ストレートに高尾山から登ることにする。
ん、どっちが面倒なんだろう。
ここの詳しい行程は割愛(詳しくは詳しくないけど以前に歩いた紅葉の高尾山はこちら)。今日も私服にスニーカーで散歩感覚の方が多い。この懐の広さこそ、高尾山の魅力だと思う。
高尾山に登ったもう一つの理由が薬王院への初詣。八王子に住む登山者にはマスト事項だろう、と。
ちょっとフライング気味の梅もちらほら。
山頂からの眺めは……
少しもやがかかっているのかな。写真にはうつらなかったけど、スカイツリーが空に浮かんでいるように見えていておもしろかった。
9:35、高尾山山頂。意外とまだ人が少ない。
山頂は小休憩にとどめて、大垂水峠へ歩き出す。
「学習のみち」という、トラバース。
若干幅の狭い個所もあるので、そこは注意。
10:25、大垂水峠。
当初、どうやって渡るんだろうと懸念していたが、そういえば歩道橋あったなと。
そして、ここに来て遭遇したのが、この標識……ぐぬぬ。「いつの間にかふれあいの道にふれあっていた」というのが大半の方の意見だと思う。
案の定、高尾山からぐっと人が少なくなる。すれ違う人も、玄人っぽい方やトレイルランナーが目立つ。
10:50、大洞山。
ちょど良いテーブルセットがあったので、ここで昼食にした。
実質、ここから南高尾山陵縦走スタート。
中沢山の聖観音菩薩像はいつくしみ深い表情だった。
そこから少し歩くと、静かな登山道中に目立つ人だかり。
地図上「展望台」とある場所がここか。長いベンチもあり、昼食をとっている方も多かった。
ちなみに、この南高尾山陵、景色が大きく開けている場所がかなり少ない。なのでみんなここで脚を止めることになる。
天気のせいもあるけど、中途半端に西を向いており、地味なのは否めない……
その他にも道中休憩スペースはたくさん用意されていて、思い思いのペースで歩ける親切設計。
遠くを眺められないので、自然、視線は近くへ向く。
ただひたすら「歩く」に徹する。これが非常に気持ち良い。
12:15、三沢峠。
ここで山道は二手に分かれる。当初は津久井湖へ下る計画を立てていたのだが、どうせならと「関東ふれあいの道」を貫徹してみることにする。
ふれあい休憩所からの城山湖の展望。
近くにありながら、山の上にある城山湖。こここを歩かない限り、見ることもなかったかもしれない。
12:35、草戸山。
展望台があるけど、景色はそれほどでもなかった。
草戸峠から眺める高尾山。思えば、高尾山を客観的に観たことがないので、この姿は新鮮だった。予想通りのたおやかな姿。
「関東ふれあいの道」としてはここから梅ノ木平へ下るのだけど、結局下りた後に車道を歩くことになるので、どうせならと尾根を続行する。
そして、ここからはあと1時間、高尾山口へ下りるだけだと思っていたが、思いのほかここの1時間区間に細かいアップダウンが凝縮されていて、結構体力を削られる。
と思ったら、唐突に「300m」の終了予告。
まだまだ空気は山の中で、本当そんなにすぐ近くなのかと思っていたら、
13:25、いきなり住宅地に突っ込んで終わった。
特におすすめする何かがあるわけではない。眺めもそこまで良くないし、杉がメインで景色もあまり変わらない。
けど、近場にも関わらず、高尾山の喧騒から離れた静かな縦走路は、「ただ静かに山を歩く」という登山者の根源的な欲求を満たしてくれる。
これまた冬場のトレーニングにうってつけかと思う。高尾山単独、陣馬山縦走の往復もやってしまったという方、第三の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。